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舞台保存会だより64 舞台展示とクラフトフェア

2013年6月24日

舞台展示とクラフトフェア

去る5月25日、JR松本駅前に深志舞台が並びました。松本駅主催による「松本駅前広場ふれあいデー」への出演展示です。晴れ渡った空のもと、9台の舞台が五月の強い日差しを受けて輝き、多くの市民や観光客の供覧に応えました。

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(松本駅前に展示された舞台たち)

今回の駅前舞台展示は昨年からの宿願でした。松本駅では昨年の4月と6月に、「松本駅周辺整備事業完成記念」と「松本駅開業110周年記念」という2つの式典が催され、ともに舞台の出動・展示が企画されたのですが、両回とも雨のため舞台の出動は中止になってしまいました。更に7月の「信州まつもと大歌舞伎・登城行列」も、朝方降雨のため舞台は出場できず、昨年は本当に雨に祟られました。

しかしJR松本駅は舞台の駅前展示に執心強く、なんとかこれを実現したいと、今年は晴天の期待できる5月に企画されたもようです。今回の「ふれあいデー」も「松本駅開業111周年記念」とサブタイトル付きで、なんだか舞台展示を実現するために企画したイベントではないかと勘繰ってしまうほどですが、その甲斐あってか、この上ない好天に恵まれ、一年越しの舞台展示企画は三度目の正直で漸く実現できました。関係者一同胸のつかえが取れた思いです。

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(松本駅前に曳かれてくる深志舞台)

舞台を駅のイベントに出場させることについては、松本駅の希望は勿論ながら、寧ろ舞台保存会の方に強い思いがありました。

松本深志舞台保存会はJRに大きな恩義があります。

保存会が発足して間もない平成11年、町の継承文化財である舞台と舞台行事を維持・保存してゆこうという当会の事業は、JR東日本を母体とする公益財団法人「東日本鉄道文化財団」より支援事業と認定され、3年間にわたり多額の支援金をいただくことができました。それも使用方法を制限しない、まったくフリーの補助金としてです。

この支援金を基金として「平成の舞台修復事業」が動き出します。舞台保存会は包括町会の舞台修復に対して助成金を出し、また資金の不足している町会に対しては貸し出しも行いました。更に修復に際しては信州大学土本研究室による舞台調査と、その指導に基づく文化財修復を求めるとともに、その調査費を基金から助成することとしました。

深志舞台は16台もありますから、個々にはあまり多額の助成金とはならないのですが、これにより各町会とも舞台修復に意識が向いたことは確かです。

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(「東日本鉄道文化財団」の認定書)(その認定書授与式 平成11年 松本市役所にて)

その後、平成13年に深志舞台は「松本城下町の舞台」という名称で松本市の『重要有形民俗文化財』に指定されます。舞台修復には松本市からも多額の補助金が出ることとなり、平成の舞台修復事業は本格化してゆくのですが、松本市の文化財指定もJRの支援事業指定に触発されたという向きもあり、その意味でも東日本鉄道文化財団による支援は大きかったと思います。

平成15年の本町3丁目舞台を皮切りに、平成25年の今夏竣工予定の本町4丁目舞台まで、先に修復を了えていた博労町舞台(平成11年改修)を含め15台の舞台が、わずか10年ほどの間につぎつぎと全面改修を遂げました。高度成長期のような勢いですが、これもきっかけは東日本鉄道文化財団による支援といってよいでしょう。

そんなわけでJRへの恩返しは、修復成った舞台を大切に運行することと、こうした機会に美しく甦った舞台を展示して、支援の成果をご披露することだろうと思っています。

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(松本駅前に展示された舞台たち)

25日朝6時、それぞれの舞台庫から曳き出された9台の舞台は、JRや松本市職員サポーターの協力を得て、朝陽を背に松本駅に向かいました。今回出動したのは、本町3丁目、本町5丁目、伊勢町2丁目、伊勢町3丁目、博労町、宮村町1丁目、飯田町1丁目、飯田町2丁目、小池町の、9町会の9台です。舞台は播隆上人近くの公園に3台、駅口北側のシェルター通路脇に6台が並びました。

松本駅前は昨年までの改装で、広々とした空間を感じられる開放的な雰囲気になっています。そこに並んだ深志舞台は、それなりになかなか映ります。空は雲ひとつない快晴、爽やかな風が抜け、天気には何の心配もありません。

この日はクラフトフェアの初日で、多くの人が松本駅を利用し駅前を通過することが予想されました。

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(松本駅前でのイベント風景) (紹介するまでもなくアルプちゃん)

午後、気になって様子を見に行きますと、駅前はブラスバンドの演奏が響き賑やかです。松本市や長野県のゆるキャラ・マスコットも出演し、愛嬌をふりまいています。舞台には人集りができるような人気はありませんでしたが、外人の観光客がカメラを向けたり、舞台をバックに記念写真を撮る家族の姿も見られました。

後に駅長さんから聞いた話では、驚いた様子で舞台を見ながら、

「これは高山から持ってきたのですか?」

などと訊く人もいたそうです。

高山の屋台と間違われては面映ゆく、苦笑するほかありません。

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(播隆上人と舞台)

駅からは、まっすぐ東へ向かう人の列が目立ちました。クラフトフェアに行く人たちです。ついでにあがたの森まで行ってみることにしました。

人の列は美術館辺りから更に太くなり、渋滞しながらあがたの森に吸い込まれてゆきます。この日は殊に陽射しが強く、気温も30度を越え、列は喘いでいました。県外から訪れた人も松本の暑さに驚いたことでしょう。

クラフトフェア会場に入っても行列と渋滞は続いていました。たいへんな人出です。ただ、あがたの森は木陰が涼しく、5月らしい爽やかさを感じられました。

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(クラフトフェアでの人出 あがたの森で)

松本のクラフトフェアも今年で29回目だそうで、30年近い歴史があるとのこと。改めて感心します。調べてみるとクラフトフェアという催しはあちこちの街で行われているようですが、松本のクラフトフェアは格式が高く、300ほどのブース設定に、出店の申し込みは1000件を超えるのだとか。クラフトのことは最近しばしばテレビでも取り上げられ、松本は「クラフトの町」ということになっているようです。大正期から民芸運動の伝統もあり、その流れがクラフトという身近な工芸世界に結びついていったのでしょう。

民芸もクラフトも一流の芸術品というものではありません。床の間のものではなく、勝手やリビングで使われながらその美を研くものです。京都や金沢のような圧倒的な伝統文化を羨望するのではなく、民芸やクラフトの合理性を尊ぶ精神風土がこの土地にはあるようで、そこが松本らしさなのでしょう。こうした町としての個性は松本のような中規模の地方都市にとってはとても大切で、貴重な財産であろうと思います。

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(クラフトフェア風景)

ところで舞台とクラフトは、関係ありそうで、やはり全く関係なさそうです。

一週間後の6月3日、松本深志舞台保存会の総会が開催されました。今年は役員改選もなく、サミットのようなイベントも行いませんでした。決算報告と予算案が異論なく承認され、平成25年度の事業計画が発表されました。昨年の半田に続き、今年は秋の高山まつりを視察することになりました。高山屋台といえば「動く陽明門」というのが謳い文句。対するこちらは「動くクラフト」といったところでしょうか。(ちょっと卑下しすぎですか?)山車も行事も些かレベルが違いすぎますから、参考になるとも思えませんが、見事さの驚いて楽しむだけでもいいのかな、と思っています。

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(総会で挨拶する関口会長) (懇親会 梅風閣3F「飛梅の間」)

総会の最後に関口会長から、カタクラモールの再開発に関わって舞台展示施設建設の提案があることが伝えられました。詳細はまだ不明。しかし、モールのデベロッパーからは、新モールの文化的核施設として「舞台会館(仮称)」の建設を希望してきているそうです。

舞台修復事業は間もなく一区切りですが、別の方面から大きな問題がやってきました。また忙しくなってきそうな気配です。

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